第2部:食事療養及び生活療養の費用額の算定

2 入院時食事療養又は入院時生活療養

  • (1) 入院時食事療養(Ⅰ)又は入院時生活療養(Ⅰ)の届出を行っている保険医療機関においては、下記の点に留意する。
      ①医師、管理栄養士又は栄養士による検食が毎食行われ、その所見が検食簿に記入されている。
      ②普通食(常食)患者年齢構成表及び給与栄養目標量については、必要に応じて見直しを行っていること。
      ③食事の提供に当たっては、喫食調査等を踏まえて、また必要に応じて食事箋、献立表、患者入退院簿及び食料品消費日計表等の食事療養関係帳簿を使用して食事の質の向上に努めること。
      ④患者の病状等により、特別食を必要とする患者については、医師の発行する食事箋に基づき、適切な特別食が提供されていること。
      ⑤適時の食事の提供に関しては、実際に病棟で患者に夕食が配膳される時間が、原則として午後6時以降とする。ただし、当該保険医療機関の施設構造上、厨房から病棟への配膳に時間を要する場合には、午後6時を中心として各病棟で若干のばらつきを生じることはやむを得ない。この場合においても、最初に病棟において患者に夕食が配膳される時間は午後5時30分より後である必要がある。
      ⑥保温食器等を用いた適温の食事の提供については、中央配膳に限らず、病棟において盛り付けを行っている場合であっても差し支えない。
      ⑦医師の指示の下、医療の一環として、患者に十分な栄養指導を行うこと。
  • (2) 「流動食のみを経管栄養法により提供したとき」とは、当該食事療養又は当該食事の提供たる療養として食事の大半を経管栄養法による流動食(市販されているものに限る。以下この項において同じ。)により提供した場合を指すものであり、栄養管理が概ね経管栄養法による流動食によって行われている患者に対し、流動食とは別に又は流動食と混合して、少量の食品又は飲料を提供した場合(経口摂取か経管栄養の別を問わない。)を含むものである。

3 特別食加算

  • (1) 特別食加算は、入院時食事療養(Ⅰ)又は入院時生活療養(Ⅰ)の届出を行った保険医療機関において、患者の病状等に対応して医師の発行する食事箋に基づき、「入院時食事療養及び入院時生活療養の食事の提供たる療養の基準等」(平成6年厚生省告示第238号)の第2号に示された特別食が提供された場合に、1食単位で1日3食を限度として算定する。ただし、流動食(市販されているものに限る。)のみを経管栄養法により提供したときは、算定しない。なお、当該加算を行う場合は、特別食の献立表が作成されている必要がある。
  • (2) 加算の対象となる特別食は、疾病治療の直接手段として、医師の発行する食事箋に基づいて提供される患者の年齢、病状等に対応した栄養量及び内容を有する治療食、無菌食及び特別な場合の検査食をいうものであり、治療乳を除く乳児の人工栄養のための調乳、離乳食、幼児食等並びに治療食のうちで単なる流動食及び軟食は除かれる。
  • (3) 治療食とは、腎臓食、肝臓食、糖尿食、胃潰瘍食、貧血食、膵臓食、脂質異常症食、痛風食、てんかん食、フェニールケトン尿症食、楓糖尿症食、ホモシスチン尿症食、ガラクトース血症食及び治療乳をいうが、胃潰瘍食については流動食を除くものである。また治療乳とは、いわゆる乳児栄養障害(離乳を終らない者の栄養障害)に対する直接調製する治療乳をいい、治療乳既製品(プレミルク等)を用いる場合及び添加含水炭素の選定使用等は含まない。 ここでは努めて一般的な名称を用いたが、各医療機関での呼称が異なっていてもその実質内容が告示したものと同等である場合は加算の対象となる。ただし、混乱を避けるため、できる限り告示の名称を用いることが望ましい。
  • (4) 心臓疾患、妊娠高血圧症候群等に対して減塩食療法を行う場合は、腎臓食に準じて取り扱うことができるものである。なお、高血圧症に対して減塩食療法を行う場合は、このような取扱いは認められない。
  • (5) 腎臓食に準じて取り扱うことができる心臓疾患等の減塩食については、食塩相当量が総量(1日量)6g未満の減塩食をいう。ただし、妊娠高血圧症候群の減塩食の場合は、日本高血圧学会、日本妊娠高血圧学会等の基準に準じていること。
  • (6) 肝臓食とは、肝庇護食、肝炎食、肝硬変食、閉鎖性黄疸食(胆石症及び胆嚢炎による閉鎖性黄疸の場合も含む。)等をいう。
  • (7) 十二指腸潰瘍の場合も胃潰瘍食として取り扱って差し支えない。手術前後に与える高カロリー食は加算の対象としないが、侵襲の大きな消化管手術の術後において胃潰瘍食に準ずる食事を提供する場合は、特別食の加算が認められる。また、クローン病、潰瘍性大腸炎等により腸管の機能が低下している患者に対する低残渣食については、特別食として取り扱って差し支えない。
  • (8) 高度肥満症(肥満度が+70%以上又はBMIが35以上)に対して食事療法を行う場合は、脂質異常症食に準じて取り扱うことができる。
  • (9) 特別な場合の検査食とは、潜血食をいう。
  • (10) 大腸X線検査・大腸内視鏡検査のために特に残渣の少ない調理済食品を使用した場合は、「特別な場合の検査食」として取り扱って差し支えない。ただし、外来患者に提供した場合は、保険給付の対象外である。
  • (11) てんかん食とは、難治性てんかん(外傷性のものを含む。)の患者に対し、グルコースに代わりケトン体を熱量源として供給することを目的に炭水化物量の制限及び脂質量の増加が厳格に行われた治療食をいう。ただし、グルコーストランスポーター1欠損症又はミトコンドリア脳筋症の患者に対し、治療食として当該食事を提供した場合は、「てんかん食」として取り扱って差し支えない。
  • (12) 特別食として提供される脂質異常症食の対象となる患者は、空腹時定常状態におけるLDL-コレステロール値が140㎎/dL以上である者又はHDL-コレステロール値が40㎎/dL未満である者若しくは中性脂肪種が150㎎/dL以上である者である。
  • (13) 特別食として提供される貧血食の対象となる患者は、血中ヘモグロビン濃度が10g/dL以下であり、その原因が鉄分の欠乏に由来する患者である。
  • (14) 特別食として提供される無菌食の対象となる患者は、無菌治療室管理加算を算定している患者である。
  • (15) 経管栄養であっても、特別食加算の対象となる食事として提供される場合は、当該特別食に準じて算定することができる。
  • (16) 薬物療法や食事療法等により、血液検査等の数値が改善された場合でも、医師が疾病治療の直接手段として特別食に係る食事箋の発行の必要性を認めなくなるまで算定することができる。